『風雪の檻』(藤沢周平、講談社文庫)

 江戸の小伝馬町

 現代でいう東京拘置所のようなものが置かれていた場所だ。ただその牢獄は現代の感覚とは違う。役人による拷問もある、罪人でありながら牢名主という独特な存在もいる。賄賂も幅を利かすが、むしろ公認として外からの食べ物の差し入れや、煙草を吸うことを役人が黙認していたようでもある。陰惨でも陰湿でもあり、どこか妙に自由でもある。

 主人公の立花登はそんな場所で出た病人を診る役目を担う獄医。腹にたくらみを隠す者、牢獄から出られない絶望を抱える者、そういった患者と接する立ち位置である。患者から直接頼みごとをされ、どうも無視できないと感じれば時間のすきを見つけて江戸の街で探索を行う、そういう人情の持ち主である。岡っ引きのツテなどで隠された事実を紐解き、医術を学びながらも柔術の遣い手でもある彼は悪人と相対しても怯むことはなかなかない。

 医者物、犯罪物、柔術、そして時代物。かなり美味しい組み合わせのこの作品。「獄医 立花登手控え」シリーズ第二弾、『風雪の檻』である。

 第一弾は『春秋の檻』、以降『愛憎の檻』『人間の檻』と続く。講談社文庫。

 

 

新装版 春秋の檻 獄医立花登手控え(一) (講談社文庫)

新装版 春秋の檻 獄医立花登手控え(一) (講談社文庫)

 

 

 

 

 

新装版 愛憎の檻 獄医立花登手控え(三) (講談社文庫)

新装版 愛憎の檻 獄医立花登手控え(三) (講談社文庫)

 

 

 

新装版 人間の檻 獄医立花登手控え(四) (講談社文庫)

新装版 人間の檻 獄医立花登手控え(四) (講談社文庫)